魔女の宅急便考察 part.3


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<箒について>
単刀直入に言って、箒は女性の体を象徴していると言える。
キキは旅立つ際に母親からよく使い込まれた大きな箒を渡される。太くて丈夫、毛の沢山ついているこの箒は母親の体の象徴である。
一方、最初に持って行こうとしていた自分で作った箒はキキの体を象徴している。
この象徴は作品の終盤で意味をなしてくる。
ジジの言葉が分からなくなり、魔力が弱まってきていることを知ったキキは、夜中に草の生えた坂道で空を飛ぶ練習をした。そこで落下した拍子に、お母さんからもらった箒が折れてしまう。ここで「箒が折れる」というのは「お母さんの庇護がなくなる」ことを意味する。これまでは、単身知らない町にやってきたとはいえ、完全に一人であったわけではなく、まだ箒というお母さんに頼って仕事をしていた。箒が折れてしまった彼女はもうお母さんに頼ることはできない。本当に一人でやらなくてはいけない。最後にキキが手にしたデッキブラシは、やはりキキの体の象徴である。それに乗って空を飛びトンボを助けたということは、何者にも援助されることのない、キキの本当の自立を意味しているのだと思う。


<作中の対比構造>
印象的な対比を挙げたい。1つ目は、キキが宅急便をやろう思う、とおソノさんに提案してから、買い物へ行くシーンである。キキが歩く先から3人の同じ年頃の女の子が綺麗な洋服を着て歩いてくる。彼女達とすれ違った後、キキはショーウィンドウに映った自分の姿を見ながら、「もうちょっと素敵な服ならいいのにね。」とつぶやく。2つ目は、キキが空を飛べなくなった直後、これまで不時着したままだった飛行船が悠々と空へ昇り、それをキキが物悲しそうな顔で見つめているシーンである。どちらのシーンもキキの納得のいかない気持ち、悔しい気持ちを視覚的に伝えるために用いられているものと思われる。


以下、無駄知識です。
みなさんは「宅急便」てヤマト運輸の商標だって知ってました??一般的には宅配便といいます。
では、なぜ宅急便という単語がタイトルに使われているのでしょうか?
それは、魔女の宅急便のスポンサーにヤマト運輸が付いていたからなんです。
だから、「宅急便」という単語の使用許可をクロネコヤマトにもらった、というよりは、ヤマト運輸の影響で宅急便になったと言った方がいいのかもしれませんね。


魔女の宅急便考察はこれで終わりです。
魔女の宅急便以外でもジブリの作品は寓意に満ちたものが多いので、単なる受け手としてアニメを観るのではなく読み解いていく姿勢で観るといいと思います。テレビ放映しているアニメだと「意味ありそうに見えるけど、実は作者は何も考えていなかった」というシーンがあったりする(難しそうなアニメ程裏話を聞いたらがっかり、とか良くあります)ので、作品を真に理解したり、整合的に解釈するのはかなり難しいです。本当に意味があるのか、実は意味なんてないのかなんて突き詰めると作者しか分からない訳ですし。その点ジブリ作品は素直に作っているので、安心して作品と向き合えると思います(たぶん・・・)。
まぁ、アニオタはどんなアニメだろうと常にガチンコですがね。